|
「これは、ななちゃんが赤ちゃんの時着ていた服のボタン。かわいい赤ちゃんだったねえ・・」 「これは、けんちゃんがやっと歩き出したころ、公園でケガをした時着ていた服のボタン」 「これは、亡くなったおじいさんの服のボタン。やさしい人だったんだよ」 |
「ボタンからいろんなこと思い出せるなんていい話ね。 これは、おばあちゃんの想い出がいっぱいつまった、大切なボタンの缶なのね」 |
|
「これが、隣の山本さんのおじいさんの服のボタン」 「これが、向いの田中さんのご主人の服のボタン」 「これが、裏の佐藤さんの奥さんの服のボタン・・・」 |
|
「おばあちゃん!もしかしたら、ご近所の古着を集めて回っているんじゃない?」 | |
|
「そうだよ。まだまだ使えるボタンばっかりだよ。いい話だろう?」 | |
|
「ちっともいい話じゃないわ。もう・・みっともないったらありゃしない!」 | |
|
「いま、しんみりしていたじゃないかい」 | |
|
「しんみりしたのは、大きな間違いだったわ」 | |
「いまさら、間違いだったなんて言わないでおくれよ」 「間違いよ。気の迷いよ。気のせいよ」 |
「ハルコさんがしんみりしなければ、このボタン、見せなかったんだよ」 「今見なくても、いずれ見つけていたわよ」 |
「ハルコさん、しんみりしたふりをして、あたしを騙したね」 「そんな、こそくなまねをするほど、落ちぶれてはいません」 |
「・・・・・・・・・・」 |
せっかくしんみりしかけたのに、またまた始まったおばあちゃんとお母さんの口喧嘩。このあとお父さんが止めに入るまで2人のバトルはつづいたのでした。 |
前に戻る |
|
次に行く |