おばあちゃんの家には、家族の誰もがそこへ足を踏み入れることを嫌がる
恐怖の「とりあえずの間」がある





実はこの部屋は、
例の壊れたクーラーは勿論、
ボタンをはずして再利用するつもりの古着、
アイロンをあててしわを伸ばして再利用するつもりの包装紙、
今は入れる物がないけれど、
いつか間に合うだろうと思われる空き箱や空き缶などなど、
おばあちゃんがとりあえず保管してある物で
足の踏み場もないくらい散らかっているのである




「おばあちゃん!あの部屋は本来、仏間兼客間なのよ。
なのに今は誰も入れない物置状態。なんとかしてよ!」
「そのうちに時間をつくって、いらない物は捨てるつもりだよ。ねえ、だからハルコさん、頼むからもうしばらくあのままにしておいておくれよ」
「もう・・・仕方ないわね。本当にかたづけてね!おばあちゃん」

しかあし!おばあちゃんはこうつぶやくのだった

「ホ・ホ・ホ、ハルコさんも甘いね。あたしゃ、あの部屋の物はホコリひとつだって捨てる気はないんだよ。ホ・ホ・ホ・・・・」


しかあし!甘いのはおばあちゃんの方だった

お母さんは部屋にあるものを毎日少しづつ捨てているのだ。そのことにおばあちゃんはまだ、気がついていないのであった。




怖かったですねえ。今回のお話の「恐怖!!」というタイトルは「散らかった部屋」に付けるよりおばあちゃんとお母さんの内面の壮絶なバトルに付けるべきでしたねえ。
例によってここに描かれている出来事はすべてフィクションでありますので、残念ながら作者の家には「とりあえずの間」など存在しておりません。





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